その頃、私は一人暮らしをしていました。
キッチンと6畳のワンルームアパートです。
その日、ベッドで寝ていると金縛りにあいました。
金縛りはよくあうのですが、この日はいつもと全く違っていました。
何かがいつもと違う……
いつもは、「あ、動けなくなった」と思う程度で、時間が経てば動けるようになり、寝てしまいます。
しかしこの日はまず、いつもと違って何故だか怖くて目が開けられなかったです。
意識はハッキリしていますが、手も足も動きません。
そんな中で、急に空気がひんやりと冷たくなったのが分かりました。
窓を開けているわけではなく、どこからか冷たい空気が流れてくるのです。
その空気は冷たい、というだけでなく、何かぞっとするような、とても嫌なものでした。
そうしましたら、キッチンのほうからゆっくりとした足音がします。
「ああ、何か来る!」と思い、怖くて目を固くつむりました。
そして、その何かは、私の顔をじっと覗き込んでいる様なのです。
心の中で、「早くあっちに行って」と念じ続けました。
いきなり襲われる
次の瞬間、首を絞められました。
ちょうど喉ぼとけをグイグイ押される感じです。
本当に押されている感覚がありましたが、生身の人の手とも違う感じでした。
人の手ですと、その人の体温が伝わり、こちらも冷たい手だなとか、温かい手だなと感じると思うのですが、この手はそういった感じを全く受けないのです。
物質ではないものが押してくる、といったところでしょうか。
とにかく、喉ぼとけだけ押してくるのです。
苦しくて苦しくて呼吸が出来ず、その手を払いのけたいのに、全く自分の体が動きませんでした。
頭の中では叫び続けているのに、声も出ません。
そのうち、スーッと押されていた手が離れ、嫌な感じの空気も一緒に無くなりました。
ああ、解放された、という安堵の気持ちよりも恐怖ばかり残って、ガタガタ震えが止まりませんでした。
怖くて怖くて、丸まって布団にもぐって、固く目を閉じているうちに再び、寝てしまいました。
恐怖から開放されて……
いつもと変わらぬ朝でした。
夜、首を絞めに来た者が人ではなかった証拠に、玄関のカギはちゃんとかかっていましたし、ドアチェーンもかかっていました。
家も荒らされているとか、人の足跡があるとか、いつもと違う所は無かったです。
友人に話すと、「そういう時は盛り塩をしたほうが良い」とアドバイスをもらい、玄関とベッド横の出窓に置きました。
それからは全く、このような経験はしていません。
体験者:みーちゃん(40代前半女性/体験時=30代前半)
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